緊急地震速報の概要(おさらい)
地震波の P 波 と S 波 には速度差があります。この速度差を利用して、揺れの大きな S 波が来る前に予想して知らせるのが緊急地震速報です。
緊急地震速報には 予報 と 警報 の 2 種類があります。テレビやスマートフォン(エリアメール・緊急速報メール)で見聞きするのは 警報 です。警報では、最大震度 5 弱以上が予想される場合に、震度 4 以上が予想される地域などが発表されます。
猶予時間はわずか。迅速な配信が必要
気象庁|緊急地震速報(警報)発表状況 の「主要動到達時間」では、警報発表から主要動 (大きな揺れ) 到達までの時間が図で示されています。
これを見るとわかるように、猶予時間はごくわずかです(間に合わないこともあります)。そのため、緊急地震速報は迅速に配信する必要があります。
テレビ (NHK): 2 種類の音と表示
NHK のデジタルテレビ放送は、 2 種類の音と表示で緊急地震速報を知らせています。
このうち、最初の表示は 文字スーパー 機能を活用していて、素早い配信を実現しています。
「文字スーパー」で低遅延。 2010 年から実施
ピロンピロン… と後から出てくる映像や音声は、デジタル放送の圧縮・伸長処理によって 3~4 秒の遅延があります。一方で、 緊急地震速報 の文字スーパーは 1~2 秒の遅延で済みます。
これを組み合わせることで、まずは文字スーパーですぐに知らせつつ、映像で詳細を伝える、ということが可能になっています。文字スーパーは 2010 年 8 月から利用されています(緊急地震速報 地上デジタル放送での迅速化について)。
なお、 NHK の放送設備については 2-1. 緊急地震速報の放送送出設備の概要 [岡本 隆] に概要があります。ラジオの音声を含めて全自動で送出できるような設備が整えられているようです。
スマートフォン: 2 回の表示
スマートフォンのエリアメール・緊急速報メールは、最初に「強い揺れに備えてください」と表示され、数秒後に「緊急地震速報 XX で地震発生。強い揺れに備えて下さい」と表示が差し替わります(端末により若干異なります)。これは不具合ではなく、迅速に配信するための工夫です。
ETWS で低遅延に
緊急地震速報を含む緊急情報の配信は、 3GPP で ETWS (Earthquake and Tsunami Warning System) として標準化されています。
配信は 第 1 報 (Primary Notification) と 第 2 報 (Secondary Notification) に分かれています。第 1 報は種別のみに絞って短時間で配信し、第 2 報は続報としてメッセージを配信します。途中で表示が差し替わるのは、この第 1 報・第 2 報の受信によるものなのです。
まとめ
- テレビ・スマートフォンとも、配信を 2 段階にわけることで迅速な配信を実現しています。
参考
- 気象庁|緊急地震速報|緊急地震速報のしくみ
- 気象庁|緊急地震速報|緊急地震速報(警報)及び(予報)について
- 気象庁|緊急地震速報(警報)発表状況
- 気象庁|緊急地震速報|緊急地震速報を見聞きしたときは
- 緊急地震速報 地上デジタル放送での迅速化について
- 緊急地震速報の速やかな伝送について検討報告書(詳細)
- 1-2. 緊急地震速報の速やかな伝送手法 [濱住 啓之]
- 標準テレビジョン放送等のうちデジタル放送に関する送信の標準方式
- 標準テレビジョン放送等のうちデジタル放送に関する送信の標準方式別表第十八号注3の規定に基づく地震動警報情報の構成
- 次世代移動通信ネットワークにおける緊急情報の同報配信高度化
もともとライトニングトーク向けにスライドを作成していたのですが、発表する場がないので記事に起こしました。